平成16年度特許庁事業
「外国関連出願についての外国における異議申立証拠等の調査」
外国における異議申立証拠等の調査手法
平成17年3月
はじめに
本報告書は、平成16年度特許庁事業「外国関連出願についての外国における異議申 立証拠等の調査」の一環として、当該調査の手法を総括し、欧州と米国における異議申 立証拠あるいは審決・異議決定等をどのように入手し、それらがどのような形態である のかを、欧州特許庁と米国特許商標庁における手続など外国特許制度の概要にも触れな がら解説したものです。
外国特許庁への出願を基礎として日本に出願(特許・実用新案)されたもの、及び 日本への出願を基礎として外国特許庁にも出願されたものは、いわゆる「外国関連出 願」として、出願人においてはもちろんのこと、特許庁にとっても特に重要な出願で あると位置づけられていますが、とりわけ、欧州特許庁の異議申立・審判請求及び米 国特許商標庁の再審査がなされたものは、その後の帰すうが第三者からも注目されて いる、社会的影響が大きな事案とあると考えられます。
こうした重要な事案が、我が国における審判事件として取り上げられた際は、その 事案が公益に及ぼす影響にかんがみ、より一層、慎重な審理を行うことが必要であり、 外国特許庁の審査・審理経過を踏まえた厳正な審理が要求されるところです。
さらに、欧州における異議申立・審判請求及び米国における再審査に関連する証拠 類は、審査段階でのサーチでは発見できなかった情報が含まれていることが多く、我 が国における審理に資する極めて貴重な情報源であるといえます。
このよう観点から、我が国の審判に係属中の案件で、その案件に対応する欧州特許 庁の異議決定・審決、また米国特許商標庁での再審査証が発行されているものについ て、それらの内容等を調査する本事業が大変有意義であるといえるところ、その調査 手法をまとめ、具体的な事例を紹介した本報告書が、我が国における審判事件の審理 の一助となることを期待いたします。
平成17年3月
目次
頁
Ⅰ. 総論
報告書の概要 1
1. 欧州特許庁における手続 ―――――――――――――――――――――2
2. 米国特許商標庁における手続 ―――――――――――――――――――5
3. 調査手法 ―――――――――――――――――――――――――― 8
4. その他特記事項 ――――――――――――――――――――――― 9
Ⅱ.各論
1. 欧州特許庁における異議申立・審判請求 11 1.1 特許要件 ―――――――――――――――――――――――― 11
1.2 審査手続 ―――――――――――――――――――――――― 12
1.3 異議申立手続 ―――――――――――――――――――――― 15
1.4 審判手続 ―――――――――――――――――――――――― 18
2.米国特許商標庁における再審査 21 2.1 特許制度の日米の差異 ―――――――――――――――――― 21
2.2 特許要件 ―――――――――――――――――――――――― 22
2.3 審査手続 ―――――――――――――――――――――――― 24
2.4 再審査手続 ――――――――――――――――――――――― 27
3.調査手法(証拠等の特定と分析) 31 3.1 欧州特許庁・米国特許庁データベース利用にあたって -――― 31
3.2 欧州特許庁(異議決定、審決) ―――――――――――――― 32
3.3 米国特許商標庁(再審査証) ――――――――――――――― 47
3.4 分析調査報告フォーム例 ――――――――――――――――― 59
参考資料
EPO
ヨーロッパ特許法とその実務 竹中俊子訳 雄松堂出版 欧州特許入門 木梨貞男著 発明協会
ヨーロッパ特許要点ガイド 藤村元彦他著 工業調査会 欧州特許 内田謙二著 発明協会 第三版 欧州特許実務ガイド 久木元彰著 発明協会 欧州特許庁審決の動向 発明協会
欧州特許庁審査便覧 AIPPI・JAPAN
USPTO
報告書の概要
「外国関連出願についての外国における異議申立証拠等の調査」とは、我が国の特
許・実用新案の審判案件について、そのファミリー出願の欧州特許庁・米国特許商標
庁の出願経過を調べ、異議申立あるいは審判(欧州特許庁)、再審査(米国特許商標庁)
が請求され、かつ決定等がなされている場合には、当該審判等(異議申立あるいは審
判)、再審査で提出された証拠、及び、審決又は決定(以下、審決等という)を入手し、
それら審決等を理解しやすい内容にして解説するとともに、証拠等の必要部分を翻訳
することである。
本報告書は、上記調査の手法をまとめたものであるが、本調査にあたっては、 欧州特許庁及び米国特許商標庁の手続を理解した上で、当該証拠等の入手、分析 を行う必要があることから、欧州特許庁、米国特許商標庁の特許の手続制度につ いて触れ、その後、我が国の特許・実用新案の審判案件について対応する審判等、 再審査証の証拠の入手・分析の方法について説明することとした。
また、本調査のための検索ツールとしては、欧州特許庁のデータベースサービ ス ”esp@cenet”と 米 国 特 許 商 標 庁 の ”Patent Application Information Retrieval(特 許 出 願 経 過 情 報 検 索;仮 訳)”と”Patent Full-Text and Full-Page Image Databases(特許情報検索;仮訳)”及び日本の IPDL をフルに活用するため、 日本のIPDL 以外の機能とデータベース画面も、検索手順の解説に併せて添付し た。
1. 欧州特許庁における手続
欧州特許は、欧州の多くの国で個別に特許出願をするのではなく、出願・審査 の手続を欧州特許庁に一本化して容易かつ経済的に出願人が望む国々1での特許
権取得ができるようにした制度である。査定後は各指定国で特許として登録され、 その後の権利行使は当該国の国内法に従う。しかし、欧州特許庁にて査定後9月 以内に異議申立があるか、または審判が請求される場合は、欧州特許庁に係属す る。
第三者は欧州特許査定後9月以内であれば、異議部に異議申立(付与後異議申 立)でき、また異議が却下された時は、審判請求できる。また審査部で拒絶査定 された場合、出願人は審判請求できる。異議決定または審決には、通常、補正ク レーム、決定の理由、判断した根拠である文献の引用箇所が示されている。
異議申立、審判請求手続の主な特記事項は、以下の通り。
(1) 審査方法(課題及び解決の手法problem-end-solution approach)
進歩性の判断は、技術水準に照らして、発明が当業者にとって自明でない場合、 その発明は進歩性を有するものと認める(56条)。新規性は、発明と公知技術と の間に差異があれば存在する。
進歩性判断の方法として欧州特許庁は、「課題及び解決の手法」を通常、適用し ている。この手法には次の3つの主要段階がある。
(ⅰ) 「最も近接する先行技術」を決定する
(ⅱ) 解決すべき「客観的な技術的課題」を確定する
(ⅲ) 最も近接する先行技術及び客観的な技術的課題から着手して,クレーム された発明が当業者に自明であったか検討する
さらに、進歩性要件に関して、①既知の方策の応用であるか否か ②特徴の自明 の組み合わせであるか否か③ 自明の選択であるか否か④技術的欠点の克服かに ついて、具体的に検討される2。
(2)審判部の独立性
審判は合議体によってなされ、合議体に属する審判官は独立し、一切の指示に拘 束されず、欧州特許条約のみによって拘束される。審判官は、欧州特許庁長官の提
1 欧州特許条約の締結国。
案に基づいて、管理理事会の決定により任命され、5年の任期期間中、原則解任さ れることはない。また審判官は他の部の構成員を兼務することはできない。
審決は、原則、最終審であり、裁判所に出訴することはできない。したがって審 判部自体、独立した機関の位置付けとなっている。
(3) 中間的決定
異議部の決定に関しては「中間的決定」がある。異議部はその審査手続におい て重要な争点について中間的決定を行うことができる。この決定がなされると、 独立した審判を請求できる。
(4)中間変更
ある部署が出した決定に対して審判請求がなされた場合、その部署が再考の結 果、理由ありと認めた場合その決定を変更する。ただし、当事者系の審判には適 用されない(109条)。日本における前置審査に相当すると考えられる。 (5)主請求・予備的請求
異議申立・審判において、出願人は、当初出願の明細書の記載を超えない範囲 で、クレームの補正をすることができる。その場合、優先順位をつけて複数提出 することができる。第一優先のものが主請求(main request)、それ以降は、優先 順位に応じて予備的請求3(auxiliary request)がなされる。したがって異議決定、
審決において主請求は認められず、予備的請求が認められて、特許の維持決定が なされることがある。
(6)閲覧
esp@cenet の デ ー タ ベ ー ス が 欧 州 特 許 庁 に よ り 構 築 さ れ て お り 、
CD-ROM(DVD-ROM)公報も発行されている。後述する米国特許商標庁の電子デ
ータ依頼サービスと同様なサービスは、欧州特許庁では行われていない。日本の IPDLと異なる点は、欧州特許庁が公開して問題ないと考えたものについては、包 袋の内容がインターネットで閲覧でき、またダウンロードできる。しかし、サー バーの負荷・運用時間帯によっては、応答しない場合もあるので注意が必要であ る。電子包袋中に存在しない引用ドキュメントについては、非公開のものもある と考えられるが、その場合は、外部のデータベースサービス業者に入手依頼をす るしか方法はない。
(7)言語
手続言語は、英語、フランス語、ドイツ語のいずれかと定められており、出願 における言語が、その後の手続の言語となる。上記3つの言語以外で出願もでき るが、3つの公用語のどれかにいずれ翻訳しなければならない。また、クレーム はある公用語で出願すれば、他の2つの公用語の翻訳も提出しなければならない。 補正クレームについても、特許維持決定後、他の公用語の翻訳を提出しなければ ならない。翻訳文は,欧州特許の出願後3月以内であって優先権主張日の後13月 よりも遅くない期間内に提出しなければならない。
また口頭審理の場合、当事者と欧州特許庁が合意に達したときには、手続言語 は如何なる言語であっても良い。
(8)その他事項
2. 米国特許商標庁における手続(特許)
特許の付与後、先行技術に基づいて、再度、審査官による審査を行う制度であ り、第三者が請求する場合は異議申立制度に近く、出願人(特許権者)は新たな 先行技術が見つかった時に自己の特許の有効性を確認するために再審査請求する。
再審査制度には、査定系と当事者系があり、第三者はどちらの制度によっても 請求できる。再審査請求が受理された日から、出願人(特許権者)は2月以内に クレームの補正、新クレームの追加をし、意見書を提出する。査定系再審査の場 合、第三者は、その意見書等を受領した日から2月以内に弁駁書を提出できる(こ の機会のみ可能)。その後、当該特許のクレームを認容できないと審査官が判断し た時には出願人に拒絶の理由を通知する。これに対し、出願人は意見書及び補正 書を提出できる。それでも拒絶理由が解消されない時は、通常、最後の拒絶通知 がなされ、拒絶理由が解消された時には、再審査証が発行される。当事者系は、 通常、第三者によって再審査請求され、出願人が応答するたびに意見を述べる機 会が与えられる。しかし、禁反言が再審査請求を妨げない旨の証明を提出しなけ ればならないこと、審査官との面談が出願人も含めて許されていない等の制約が ある。
一般に、再審査によって特許が無効と判断された時には、出願人は審判請求を 行う。
再審査の経過は、米国特許商標庁の「特許出願経過情報検索」により電子的に 参照できる。再審査証発行直前の「再審査発行についての通知(再審査決定理由)」 には、決定の根拠等について十分な内容が含まれていないのが通常であり、経過 記録の内容を順次追跡する必要に迫られることが多い。
米国の再審査手続の主な特記事項は下記の通り。 (1) 新規性と非自明性
や特許明細書に記載されている場合には、新規性の要件を満たさない。また、刊 行物に記載されていなくても、発明前に米国内で公知であった発明や他人に使用 されていた発明も新規性がない。
また特許を受けようとする発明を全体として見た場合に、その発明と先行技術 との差異が、その発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明で あったといえる程度の場合は、特許を取得することができない。
(2) 査定系再審査と当事者系再審査の差異
従来は査定系の再審査制度しかなく、出願人(特許権者)の最初の応答に対し て1回のみしか意見を言う機会がなく、それ以降は、審査官と出願人とのやりと りのみで審査が進行していくため、第三者には不利であった。そのため当事者系 の再審査制度が導入された。
両制度の主な差異点は、以下の通りである。
① 査定系の請求人は誰でも良いのに対し、当事者系は利害関係人である。 ② 査定系は第三者による異議申立であり、出願人は特許を確認することで
ある。また当事者系は特許無効の申立となる。
③ 第三者が意見する機会は、当事者系では保証されている。
また、当事者系は、審査官との面談ができないことや、禁反言の原則が後の裁 判等で働くことなど、制限が多く、また当事者系の方の再審査費用は3倍以上高 い。
(3) 再審査過程でのクレーム番号の推移
再審査において、出願人はクレームを補正することができる。クレームを削除、 新規追加、変更することができ、査定直前にクレーム番号付けの変更が行われる。 したがってクレーム番号の抜けや、当初のクレーム番号にあった内容が他のクレ ーム番号になることがあるため、クレーム分析を困難にしている。
(4) 再審査証
また、再審査制度自体は、当事者系の導入により第三者の異議申立機会制限は ある程度緩和されたものの、未だ出願人にとってのクレーム範囲の確認的意味合 いが強く、第三者にとって有効な異議申立制度とはなっていない。
従って、決定自体よりも、判断の根拠とされた引用文献に意義があると思われ る。
(5) 閲覧
2004年夏より、包袋についても電子閲覧が可能となった。このため”Patent
Full-Text and Full-Page Image Databases 特 許 検 索 機 能”と”Patent
Application Information Retrieval特許出願情報検索”により調査を遂行できる。 パテントファミリ検索は欧州特許庁のesp@cenetを使用し、特許引用文献検索は、 外国知的財産庁のデータべースを含め、インターネットで検索する。非特許引用 文献は米国特許商標庁のホームページから電子的に請求するか、外部の専門業者 から入手する必要がある。また包袋は、非公開のドキュメント(購入可能)を除 いてダウンロード可能である。
(6) 非自明性の判断
非自明性の判断は数々の判例の蓄積によって確立されており、発明が自明である か否かの判断基準は、グラハム事件判決にしたがってなされる。
(7) その他事項
欧州特許庁の異議決定・審決と比較して、米国の再審査は、審査というプロセ スのためか、再審査証発行直前の再審査決定理由の部分のみが示されており、全 貌が判明することはない。したがって拒絶通知とその応答、また再審査請求の内 容、場合によりインタビュー記録を参照しないと十分に分析できない。
3. 調査手法
調査手法の手順概要は、下記の通り。
本調査に利用するデータベースは、欧州特許庁のesp@cenet、及び、米国特許商 標庁のホームページにある特許情報検索と特許出願経過情報検索機能である。 (1)対象案件サーチ(パテントファミリ)
インターネットを利用して日本出願に対応する欧州特許、米国特許をパテント ファミリの中から探し出す。
そのため審判番号に対応する日本出願の公開番号によりesp@cenetでパテント ファミリパテントに属する特許を検索する。その結果から欧州特許番号、米国特 許番号のみを取出す。
(2)欧州特許
欧州特許であれば、esp@cenet により欧州特許の情報を検索して調査し、審決 が発行されているか、異議申立がなされているかを確認する。次いで、経過記録 情報を参照し、異議決定または中間決定がなされているか、または審決が出てい る案件であれば、異議申立の過程を経て審決がなされているか確認する。その結 果、欧州特許の案件が、①異議申立を経た審決か、②異議決定または中間決定の 段階までか、③出願人による審判請求かを判断する。また同時に、争点が新規性 か進歩性によるかも判断する。
(3)米国特許
米国特許であれば、米国特許商標庁のホームページにある特許出願経過情報検 索機能により該当特許番号で参照する。経過記録からまず、査定系再審査か当事 者系再審査かを判断するとともに、査定系であれば第三者による請求か、また再 審査証が発行されているか見極める。この過程を経て、①第三者による再審査請 求で再審査証が発行されているか、②出願人(特許権者)による再審査請求で再 審査証が発行されているか、が判明する。
(4)留意点
4. その他特記事項
本業務を精度の高い報告とするための留意点は下記の通り。
(1)欧米の最新クレーム
欧州特許庁、米国特許商標庁において、異議申立・審判、再審査の過程で出願人はクレ
ームを出願当初の明細書の記載によって裏付けられた(クレーム範囲の拡大は不可)範囲
で補正する。決定のベースとなったクレームが何かは、包袋の内容を調査し、見極める必
要がある。欧州特許については、補正されたクレームも決定理由も比較的明確に記載して
いる場合が多いが、米国再審査は、包袋を丹念に追跡しないと不明な場合も多々あるので
注意をしなければならない。
(2)優先権出願番号
審判請求された日本出願の優先権のもとになった出願番号4が、解析対象しようとして
いる欧州特許または米国特許のものと同じか見極めることが重要である。これにより、ク
レームが日本と欧米で大幅に異なることは少なくなる。
1.
欧州特許庁における異議申立・審判請求
欧州特許庁では、付与された特許査定に第三者が不服の場合は、付与後9月以内 に異議申立を行う「付与後異議申立制度」5を採っている。
また欧州特許庁は異議申立の案件を異議部で取扱うのに対し、異議部の決定と審 査の拒絶査定に不服の場合は、審判部で取扱う。一般に審判部の決定が最終審とな り、裁判所への出訴はできない。職権または当事者の請求により、重要な法律的問 題に関して法律の一定した適用を保証する必要があると判断する場合は、拡大審判 部で審理される。
1.1 特許要件
発明が特許されるためには、産業の利用性(52条)6、新規性(54条)7、進歩性(5
6条)8の3つの要件を満たすことが要求され、日本の特許法第29条第1項、第2項
の規定と同様である。
5 日本は1994年の法改正で付与後異議申立制度が導入され、平成15年改正法によって
無効審判制度へ統合された。
6 EPC52条: (1)欧州特許は,産業上利用することができ,新規であり,かつ,進歩性を
有するすべての技術分野におけるあらゆる発明に対して付与される。(2)次のものは,特に,
(1)にいう発明とはみなされない。(a)発見,科学の理論及び数学的方法、(b)美的創造物、(c) 精神的な行為,遊戯又は事業活動の遂行に関する計画,法則又は方法,並びにコンピュー ター・プログラム、(d)情報の提示
7 新規性の基準;既存技術の一部を構成しないことである。既存技術とは、公知技術(54
条2項-書面もしくは口頭開示、使用またはその他の方法により、出願以前に公衆利用が できるようになったすべてのもので世界公知主義が採られている)と、先願開示技術(54 条3項)である。
8 進歩性の基準;先願開示技術は進歩性の判断に使用されない。当業者にとって自明ではな
1.2 審査手続
(1)特許出願・方式審査・先行技術調査
特許出願されると方式審査が行われる。出願日を確保するための要件を満たさな い場合には、出願人に通知がなされ、1月以内に、その欠陥を補正することができ る。
手続言語は、英語、フランス語、ドイツ語で、それ以外の締結国の言語で出願さ れたときには、出願から3月以内で、かつ優先日から13月以内に翻訳文を提出し なければならない。方式審査にあたっては、下記事項を審査する。
・ 図面の様式
・ 出願書類の一般的な様式 ・ 後に提出される種類の様式 ・ 要約提出の有無
・ 願書の記載要件 ・ 優先権主張の要件
出願番号9が付与されると、方式審査がなされ、次いで先行技術サーチが行われ
る。サーチにあたっては発明の単一性が審査され、その要件を満たさない時には最 初に記載された発明のみサーチレポートが作成される。
先行技術サーチは、クレームに基づいてなされ、サーチ結果はレポートとして出 願人に送付される。サーチレポートの記載内容は、新規性及び進歩性判断がなされ た引用文献名とその文献と関連するクレーム、文献の引用箇所、及び関連度である。 出願人は、単一性が満たされていないと判断された部分について追加のサーチ料 を支払うことにより、単一性要件について反論することができる。また審査の段階 で単一性がないと審査部(Examining Divisions)が判断した場合には、追加のサー チ料は返還される。またサーチレポートが作成されなかった部分については、審査 部は審査しない。その部分について審査を求める場合は分割出願をしなければなら ない。
(2)出願公開10
出願日もしくは最先の優先日から18月経過後、欧州特許出願は公開される。また 出願人は早期公開を請求することができる。公開内容は原則、明細書、クレーム、
図面、要約の他、サーチレポートである。
欧州特許庁は、出願人に公開される日を通知し、審査請求の期限について連絡す る。
公衆は、3.2.1で説明する”European Patent Register”により書誌事項と手 続に関する情報にアクセスできる。
(3)審査請求
日本と同様、出願しただけでは審査開始とはならない(米国は審査請求制度なし)。 審査請求がなされて初めて、実体審査がなされる。審査請求の期限は、サーチレポ ート公開後6月以内で、期限内に審査請求がなされないと通知が届き、それから1 月以内に追加料金を支払わないと取下げたものとみなされる。また出願人が迅速な 審査を要する理由が存在することを示した場合には、早期審査請求をすることがで きる。
(4)実体審査
審査請求がなされると、出願は審査部に移管され、特許要件を満たしているかど うかの実体審査が開始される。サーチレポート(新規性・進歩性)に照らして行わ れ、明細書・クレームの記載要件(83,84条)、産業上の利用性(52条)が審 査される。また審査促進を目的として、出願人はファーストオフィスアクションを 待たずに、サーチレポートのコメントや補正を提出することができる。
実務において客観的かつ予備的な方法で進歩性を評価するために、審査官は通常 「課題及び解決の手法(problem-and-solution approach)」11を適用する。
(5)ファースト・オフィス・アクション
特許要件を満たしていないと審査官が判断した時には、ファーストオフィスアク ションにより、出願人に拒絶の理由を通知をする。この通知に対し、出願人は指定 期間内に意見書や補正書を提出でき、提出しなかった場合には取下げたものとみな される。またその意見書や補正書によってもなお、拒絶理由が解消されないと審査 官が判断した時には、さらにオフィスアクションを送付するか、電話または面接を 行う。電話または面接は出願人からも要請できる。
(6)審査部の決定
11 欧州特許庁審査便覧 C部 第Ⅳ章9.8
審査官が最終決定をするのが適当であると判断したときは、審査部の他の審査官 と相談した後、拒絶査定がなされる。拒絶査定には理由が付される。また出願が特 許要件を満たしている場合で、意見書・補正書により拒絶理由が解消した時には、 特許査定手続に入る。
(7)特許査定と付与
審査部は特許付与をしようとしているテキストを出願人に通知し、指定期間内に 同意するよう求める。応答しないとき、出願は拒絶される。また出願人がこの期間 内にクレーム・明細書・図面の補正案を提出し、審査部が同意しないときは、指定 期間内に意見を述べるよう求め、応答しないときは取下げたものとみなされ、また 出願人の意見に審査官が補正に同意しないときは、拒絶される。
出願人がテキストに同意するか、審査部が補正案に同意した場合には、指定期間 内に特許の付与料と印刷料を納付し、クレームの他の2つの公式言語による翻訳を 提出するよう出願人に通知する(特許査定通知)。
また優先権を主張している場合には、同一指定期間内に第一国出願特許の翻訳を 提出するか欧州特許庁出願と同じ内容であることの宣言書(declaration)を提出す る。
特許付与と同時に特許が公表され、出願人は、その日から各指定国においてそれ ぞれの国内特許権と同等の権利を有する。被指定国側では、特許明細書が自国の言 語でないときは、所定期間内に翻訳提出を要求することができる。
1.3 異議申立手続(Opposition Procedure)
特許が付与されると3月以内に明細書を指定国の国語に訳して、所定料金ととも に各国の知的財産庁に提出する。その指定国知的財産庁は、国内特許と同じ権利を 持つ特許として認定する。欧州特許付与の日から9月以内に出願人(特許権者)以 外の誰12でも、特許付与に対する異議申立をすることができる。異議が申立てられ
ると、欧州特許庁の異議部(Opposition Division)で審査され、異議決定がなされる。 異議部は3名の技術審査官から構成され、少なくともその2名は異議が申立てられ た欧州特許の付与手続に関与した者であってはならない。また付与手続に関与した 審査官は部長(chairman)になることができない。また異議に関する最終決定をなす 前に於いて、異議部は異議の審査をその部の1名に委ねることができる。
(1)手続概要
審査は異議部で行われ、方式担当官により方式審査を行い、必要であれば異議申 立人に必要な補正をさせた後、異議申立書は出願人へ送付される。出願人は通常4 月以内に答弁書(observation)、及び補正する場合は補正書を提出できる。また補正 はこの段階でしておかないと、後の段階では認められない可能性が高い。出願人の 提出した答弁書や補正書は直ちに異議申立人に送付される。異議申立人は指定期間 内(出願人が補正した場合は4月、そうでない場合は2月)に弁駁書を提出し、意 見を述べることができる。必要な場合は、さらに当事者から書面の提出を求める。 異議部は、異議申立に対し決定しなければならない。異議決定は、特許取消か異 議申立理由なしの決定か補正後の内容で維持するかのいずれかである。補正後の内 容で維持する場合は、補正後の内容で特許公報が再び公表される。
(2)異議申立手続と出願人による応答
異議申立人は異議申立書を提出する。その際、引用する新たな書類の写しと公用 言語以外の書類の翻訳文を含む関連性のあるすべての書類、また可能であれば申立 書に提示した証拠の写しを提出する。
規則55(c)に基づき、異議申立の理由13を裏付ける事実、証拠及び主張の表
12 99条1項;出願人を除いて如何なる者も異議申立できる。明確な規定はないが、拡大
審判判定の決定によれば、”Straw Man”(ダミー)による異議申立て可能。
13 100条;特許可能な発明(52条)、特許性の例外(53条)、新規性(54条)、新規性
示を含まなければならない。異議申立がなされると、出願人は4月以内に応答する よう求められる。その際、出願人の主張を裏付けるすべての事実、証拠を提出しな ければならない。また異議申立理由に対抗するため、必要と考えられる補正があれ ば補正書を提出する。
(3)口頭審理14
口頭審理の主題は重要な争点であるが、当事者はそれだけに関わらず具申するこ とができる。ただし、その内容が関連性ありと異議部が納得することが必要である。
当事者は新たな事実または証拠の提出を許されない。ただし異議部が、その書類 を簡単に通読し、重要であると結論した時は裁量権を行使して新たな事実・証拠の 提出を許可する。
(4)口頭による証拠
口頭による証拠調査は、異議部が必要と認める場合にのみなされる。例えば重大 な争点に関する証拠が、証人の記憶または信憑性に依存する場合で、先使用の場合 に該当する。
(5)侵害者と推定された者の参加
如何なる第三者も異議部の決定がなされるまで、何時でも第105条15に基づい
て参加できる。参加が適式に提出され許容されれば、異議申立として扱われる。 (6)異議部の職権による審理
実務上は異議申立人の提起した理由に限定するものの、114条1項に基づき異 議部は当事者の具申に制限されないで、単一のまた異議申立の取下げにも関わらず 職権により継続できる。
(7)情報提供制度
出願公開後、如何なる第三者も、規則に基づいて特許性に関して意見を書面にて 提出できるが、異議申立手続の当事者にはなれない。
(8)中間的決定16(interlocutory decisions-separate appeal allowable)
14 口頭手続と訳している例あり。
15 105条; (a)同一の特許権についての侵害手続が、その者に対して開始されたことまた
は(b)出願人がその者に特許権の侵害を中止するよう請求した後に、その者が特許権を侵害 していない旨の裁判所の裁定を求める手続を開始したことを証明できる第三者は異議申立 手続に参加できる。
16 106条2項;当事者の一方について手続を終結させない決定に対しては,その決定に
異議部はその審査手続において重要な争点について中間的決定を行うことがで きる。この決定がなされると独立した審判を請求できる。(例えば、出願人の提出 した補正の却下に対する審判請求)
(9)異議決定17
異議部は,異議申立の理由の少なくとも1によって,欧州特許を維持することが できないと認める場合は,特許を取消す。それ以外の場合は,異議申立は,却下す る。
異議部は,異議申立の手続中に特許権者がした補正を考慮した上で,特許及びそ れにかかる発明が,(a)本条約の要件を満たしていると認める場合は,施行規則に定 める条件が満たされている場合に限り,補正された明細書を維持するという決定を し,(b)本条約の要件を満たしていないと認める場合は,その特許を取り消す。
1.4 審判手続(Appeals Procedure)
審判は受理部、審査部、異議部、法律部がした決定(「第一審の決定」)に対して 請求でき(106条)、また欧州特許がすべての指定国で放棄、消滅している場合で も、異議部の決定に対して審判請求することができる。審判請求は、不服査定の場 合は出願人により、異議決定に対する不服の場合は第三者により行われ、審判請求 理由書を添付する。
審判請求が受入れられると判断したときは審理が開始され、審判合議体によって 書面と口頭により進められ、審理が終結すると審決が発行される。
(1)審判請求者の資格
審判請求の対象となる決定の手続の当事者であり、かつ、自己に不利な決定が出 ている自然人、法人であれば請求できる。(107条)
請求がなされると他の当事者は自動的にその審判の当事者となる。 (2)審判請求理由書
審判請求は決定の通知から2月以内に文書で提出し、4月以内に理由書を提出し なければならない。
請求書の記載事項は下記の通り。 ・請求人の氏名または名称、住所
・審判の対象となる決定、争点の明確な特定
・前審での決定に至る事実と決定が取消されるべき理由
(前審で提出されなかった新たな事実、法律的主張は原則、追加できない。 一方、審判官の裁量により追加する事ができる。)
(3)中間変更(Interlocutory Revision)18
ある部署が出した決定に対して審判請求がなされた場合、その部署が理由ありと 認めた場合、その決定を変更する。ただし、当事者系の審判には適用されない(1 09条)。日本における前置審査に相当すると考えられる。
中間変更は、本来その部署が考慮しなければならなかった資料・事実のある場合 になされる。
すなわち、審判請求は審判部ではなく、まず第一審の部に審判請求書と審判請求 理由書の記載をする審査の機会が与えられることを意味する。
審判請求の書面の受理後、第一審の部で3月以内に受容されなかった場合には、
審判部に速やかに送られる。 (4)審決根拠
欧州特許条約、施行規則、審判手続規則、審査基準、過去の審決例、国内法、国 内判例などが審決の根拠として引用される。
(5)審判合議体と審理
審判廷が担当する。この審判廷は欧州特許庁、欧州特許庁長官の指示によりコン トロールされることはなく、独立した合議体としての地位を持っている。したがつ て審判廷は裁判官と同様な司法的地位を持っていることになる。審判官は受理部、 審査部、異議部、法律部の構成員にはなれない。(23条)
また、審判部の構成要員数については21条19に規定されている。
査定系審判の場合は、審査部の決定に拘束されず独自に特許性の判断をすることが できるが、当事者系(異議決定に対する審判請求)の場合には、原則として異議申 立事項に限定される。
(6)審判請求の効果
審判請求されると審判対象となった決定は最終的なものとならない。したがって、 その決定・効力は停止されるため権利行使できない。(106条)
(7)書面審理と口頭審理
異議申立手続とほぼ同一であり、審判部は当事者に指定期間内に意見書を提出す るよう求める。意見書の機会は1回に制限されず、審判部が必要と考えれば何回で も意見書提出が求められる。
口頭審理は当事者の一方からの請求に基づいて行われるか、審判廷の判断により 行われる。
(8)審決
審理が終結すると審決を出す。審決には審判廷で決定を出す場合と第一審の決定 をした部門に、十分な審査、考慮を怠ったとして差戻す場合がある。差戻審決の場 合、その差戻しされた部署は、同一の事実・証拠で決定を再審査する限りは、審決 に拘束される。
(9)その他(拡大審判廷Enlarged Boards of Appeal)
19 3項;審査部の決定の場合(拒絶・付与・減縮・取消に関して、審査が4名の審査員に
よってなされた場合は、3名の技術構成員と2名の法律の構成員からなり。3名以下の場 合は、2名の構成員と1名の法律構成員からなる。
拡大審判廷は、審判廷の上級審ではない。すなわち審判廷が最終審を出す。 拡大審判廷は、法律の均一適用の担保及び重要な法律問題を審理する。拡大審判 廷の審理が必要であると審判部が判断した場合または審判の当事者からの請求を 審判廷が妥当と考える場合、その審判事件は拡大審判廷へ移管される。
2.
米国特許商標庁における再審査
日本や欧州で特許査定された特許に異議申立をするのと同様な米国の制度とし ては、再審査制度が存在し、査定系再審査と当事者系再審査が存在する。査定系で も第三者が請求することはできたが制約が多いため、当事者系再審査請求制度が新 たに設けられた。
2.1 特許制度の日米の差異
(1)日本にあって米国にない制度
日本では特許出願して方式審査を経た後、3年以内に出願人が審査請求をして、 初めて審査が開始されるが、米国にこのような審査請求制度はない。したがって米 国は、特許出願がなされると直ちに審査が開始される。
米国に異議申立制度はない。異議申立制度の代替として、米国では、再審査請求 制度がある。
(2)米国にあって日本にない制度
二以上の特許出願人のうちどちらが最先に発明をしたかについて審査するイン タフェアレンス手続き20がある。
また、親出願の出願日の利益を享受する継続出願をすることができ、出願の内容 に新規事項を追加する一部継続出願と、出願の内容の一部を分割する分割出願に分 けられる。また類似した手続として、実質的に審査のやり直しを求める継続審査請 求がある。
通常の特許出願の要件を満たさない形式による出願として仮出願21制度があり、
クレーム等を整備する余裕のない場合に、先発明としての出願日を確保する意味で、 重要な特許の場合に使われる。
また、自己が最先の発明者であることを信ずる旨、宣誓書を提出する義務がある。
20 先発明主義を採用しているため、発明の先後日を争う手続きで、通常、審査官が手続開
始を宣言するが、出願人がインタフェアレンスの存在を確認した時にも宣言することがで きる。インタフェアレンスの根拠は第102条(g)で、着想・実施化・誠実な努力等である。 インタフェアレンスは相当な費用と時間を要するため、当事者間の和解に持ちこむ事が多 い。
21 特許の有効期間は、正式な出願日以降であり、先発明としての地位を担保する目的に使
2.2 特許要件
(1) 101条22(法定の主題・有用性)
保 護 対 象 は 方 法(process)、 機 械(machine)、 生 産 物(manufacture)、 組 成 物
(composition)またはその改良のいずれかに属さなければならない。第 101 条にあ
る「有用な」とは、「当業者が公衆に直接的な利益をもたらす発明」をいい、現実 的な利益価値といってもいい。23
(2) 102条(新規性)
新規性に関する拒絶理由24は、公知・使用・特許・印刷刊行物・発明日前出願・
先発明・公用・販売・外国特許・発明の放棄・冒認である。
また、102条は、新規性に関する(a),(e),(g)項と、権利喪失に関する(b),(d)、その
他の要件(c),(f)に分かれており、権利喪失に関しては、先行技術が、発明者による
ものか、他人によるかに関わらず、米国における特許出願日より1年以上前に、特 許取得、刊行物記載、公用または販売された発明は、特許を受けられない。米国よ りも12月以上前に外国で出願されたものが、同じ出願人により米国に出願され、 それが米国特許付与以前に外国で特許付与されたとき、同じ発明が含まれている場 合は、特許を受けることができない。
(3) 103条(非自明性)
非自明性の判断は数々の判例の蓄積によって確立されており、発明が自明である か否かの判断基準は、グラハム事件判決によって示された25。
本来、出願人は、自己の発明が自明ではないという事実を立証することは必要な い。一方、審査官は103条に基づいて拒絶理由を通知するとき、証拠を提示して一
22 101条:新規かつ有用な方法、機械、生産物、組成物、またはその改良を発明した者は、
それらについて単一の特許を受けることができる。
23 米国特許審査便覧MPEP2107.1
24 102条の項番と根拠の関係 (a)公知, 使用, 特許, 印刷刊行物 (b)特許, 印刷刊行物, 公
用, 転売 (c) 発明の放棄 (d) 外国特許 (e) 発明日前の出願 (f)冒認 (g) 先発明
25 MPEP214; グラハムテスト: ①先行技術に開示されている範囲と内容を特定 ②先行技
術とクレームとの差異を確認 ③その技術分野における当業者の水準を解明 ④副次的な 証拠を確認。
応の自明(prima facie case of obvious)を立証する義務がある。審査官が一応の自明
26を立証しても出願人は反証により覆すことができる。
26 一応の自明の要件MPEP2142[引用例、または当業者が広く入手可能な知識に引用例を
2.3 審査手続
(1)方式審査
特許出願されると方式審査の後、審査官は審査を開始する。 (2)限定要求
審査官は、複数の発明が単一の出願中にクレームされていると判断したときには、 限定要求27を出願人に送付する。出願人は、限定要求に対して、最初の審査時に審
査を受けるべきクレームを選択する。この場合、限定要求を否認し、再考を求める こともできるが、否認の場合は審査官の過誤を明確かつ具体的に指摘する必要があ る。再考を要求しても限定要求が撤回されないときは、米国特許商標庁長官に誓願 を提出することができる。しかしながら、通常は分割出願等で権利化を図ることが 多い。
(3)米国特許出願の公開
2000年11月29日以降に出願したものは、出願日から18月経過後、速やかに 公開される。ただし、その時点で特許庁に係属していない出願、秘密指令対象、仮 出願、(意匠)、非公開請求の出願は公開されない。また何人も公開された出願に対 して情報提供をすることができる。ただし、特許または刊行物に限定される。 (4)最初の拒絶通知(First Office Action)
審査官は、先行技術を調査検討し、クレームを拒絶するときは、その理由の説明 及び根拠となる引用文献を示した拒絶理由通知を発行する。出願人は、補正・意見 書または宣誓書の提出、もしくは審査官との面談により、特許要件を備えている旨 を主張する。
応答期間に関しては、法定期間は6月であるものの通常、3月が指定される。た だし手数料を払えば1月単位で3月まで延長が可能である。補正書は明細書の記載 によって裏付けられていれば補正することができる。意見書(remarks)では、審査 官が発明の特許性について誤解している場合は、その旨を引用例とクレームされた 発明の差異について説明する。補正書と意見書は同一の書面とし、補正、意見の順 とする。
(5)宣誓供述書
規則1.131(先発明についての宣誓供述書又は宣言書)
規則1.132(実体的拒絶又は方式拒絶に反論するための宣誓供述書又は宣言書) 上記規則に基づく宣誓供述書または宣言書を提出する。宣誓供述書(affidavit)は、 宣誓供述者が作成し、公証人による公証を受けた書面をいう。
(6)審査官とのインタビュー
審査官とのインタビューは、直接的な面談、電話、画像会議、またはEメールに よって行う。インタビューは通例、最初の拒絶理由通知の後にすることが好ましい。
なお、最後の拒絶理由の後であっても、インタビューすることは可能であるが、 補正の制限が厳しいことを念頭に置かなければならない。
(7)最後の拒絶理由通知(Final Office Action)
最初の拒絶理由通知の応答で拒絶理由が解消されなかった時は、2度目の拒絶理 由を出願人は受け取る。通常28は、2回目が最後の拒絶理由通知(Final Office
Action)となる。これに対し、出願人は、再度、特許要件を具備していることを主
張する。
最後の拒絶理由通知に対する補正は、クレームの削除、先の拒絶理由通知で通知 された方式的な要件を満たすための補正、審判の審理のためにクレームをよい良い 形式にするための補正に限定される。応答期間は、最初の拒絶理由通知の場合と同 一である。
その拒絶理由通知の反論により、審査官が特許要件を具備していると認めたとき は、特許付与(Allowance)通知がなされ、特許料を払うことにより特許が発行され る。
(8)アドバイザリ通知29(Advisory Action)
最後の拒絶理由通知でも解消されない時は、出願人は、アドバイザリ通知
(Advisory Action)を受取る。アドバイザリ通知に対し、出願人は継続審査請求か審
判請求を行う。再審査請求においてアドバイザリ通知後、出願人による審判請求が なされ、その直後、特許維持の通知がなされた場合もある。
(9)継続審査請求(RCE-Request for Continued Examination)
継続審査の請求とは、同一出願で審査の継続を求める請求をいう。これは実質的 に審査のやり直しを求めるものである。また審判と違って、補正や新たな証拠提出
28 2回目の拒絶理由通知が最後とならない場合; 出願人がした補正に基づかない新たな拒
絶理由通知をするもの、または適正な期間内に出願人により情報開示された先行技術に基 づく拒絶理由を通知するもの。
が認められており、自由度が高く一般的にアドバイザリ通知を受けた時の対応方法 である。
補正が新たな問題を提起している場合は、審判請求よりも継続審査請求が良い。 (10)継続的な出願(分割出願を含む)
一部のクレームだけが拒絶されている場合、当該クレームを補正により削除し、 その削除したクレームについて分割出願することも検討に値する。
また、限定要求に対して選択しなかった発明について審査を受けたい場合も、分 割出願が必要となる。
補正が新規事項を追加することを理由に却下されている場合は、一部継続出願 (CIP; continuation-in-part application)をしても良い。
(11)審判請求
クレームの拒絶が不服の場合、審判部に対してその拒絶の再検討を請求する手続 きをいう。審判では原則として補正が認められない。また審決まで数年かかるとい われる。
最後の拒絶通知日から3月(最大でさらに3月延長可)の期間内に請求しなけれ ばならない。審判請求は特許審判インタフェアレンス部に提出する。
(12)特許査定から発行まで
審 査 の 結 果 、 審 査 官 が 特 許 を 付与 す べ き と 判 断 と し た と き は 、特 許 付 与 (allowance)を通知する特許査定通知(Notice of Allowance)を発行する。
2.4 再審査手続30
特許の発行後、先行技術に基づいて再度、審査官による審査を行う制度であり、 第三者が請求する場合は異議申立制度に近く、出願人(特許権者)が請求する場合 は新たな先行技術が見つかった時、自己の特許の有効性を確認するために審査を求 めるのに使用する。再審査制度には、査定系と当事者系があり、第三者はどちらの 制度によっても請求できる。
2.4.1 査定系再審査(ex partes reexamination)
(1)再審査請求(Request for EX Parte Reexamination)
第三者(利害関係人以外でも可)、出願人(特許権者)により再審査請求する。 その際には次の資料を添付する。(規則1.510)
・先行技術に基づく、特許性に関する実質的な問題についての陳述書 ・再審査を求めるクレームの特定と、先行技術との関連性についての説明 ・先行技術のコピー
・特許のコピー
(2)再審査をするか否かの決定
請求後3月以内に、特許庁長官はその請求が「特許性に関する実質的な問題」を 提起しているか否かを決定する。新たな問題が提起されていないと判断された時は、 請求人は再考を求める嘆願書を提出することができる。その嘆願書が拒絶された時 は、不服申立ができない。新たな問題とは先行技術に関するものであり、考慮され る先行技術は、特許と印刷刊行物31に限定される。新たな問題を提起していると判
断した時は、再審査の命令を出す。 (3)その応答
出願人は、上記命令の受領日から2月以内にクレームの補正、新クレームの追加 及び意見書を提出できる。請求人が第三者である場合は、その補正書、意見書を受 領した日から2月以内に弁駁書を提出できる。第三者にとって唯一の反論の機会で あり、以降、第三者は意見を述べることが出来ない。
(4)拒絶の通知
30 再審査フロー;図2-1参照。(当事者系MPEP2601.01 査定系 MPEP2201.01) 31 MPEP2128.01 (1)広く拡布されているか、または(2)公衆が知りうる状態にある文書で、
通常の特許出願の審査と同様な審査が行われ、審査官が拒絶の理由を発見した時 は、出願人に通知する。以前の審査で引用された先行技術のみで拒絶されることは ないが、以前の引用先行技術と新たな先行技術との組合せにより、非自明性で拒絶 されることはある。
(5)その応答
出願人は、拒絶通知に対し、意見書及び補正書を提出できる。ただし、補正書に 新規事項は追加できない。応答期間は通常2月である。特別な事情があれば、1月 延長することができる。審査官から出される2回目の拒絶通知は、通常の審査と同
様、Final となる。Advisory Action があることも、通常の審査と同様である。通
常と異なることは、拒絶の理由が解消しない時は、継続出願を行うことができず、 その場合の方策としては審判請求しかないことである。
(6)再審査の終了
審査が終了すると再審査証(Reexamination Certificate)が発行される。審査証に は、削除クレーム、最終的に特許性がないとされたクレーム、特許性があるクレー ムが示される。
2.4.2 当事者系再審査(inter partes reexamination)
2002 年改正法により導入された。従来からの査定系再審査は、第三者が請求し ても一回しか応答することが許されていないため、第三者を排除した形、すなわち 審査官と出願人間でのやりとりのみで進められるため、第三者には不利であった。 査定系再審査の形は残したまま、当事者系の再審査が追加されている。しかしなが ら、費用が高いことと、禁反言32、審査官との面談が許されていないなどの制約が
あるため余り利用されていないと思われる。
(1)再審査請求
当事者系再審査は何人も再審査請求できる。ただし、請求人は、実質的利益当事 者(利害関係も)を明記しなければならない。先行技術の扱いは、査定系と同一で ある。
提出する書類は査定系で定められた書類の他に、禁反言が当事者系再審査の請求
を妨げない旨の証明と、利害関係にある第三者を特定するための陳述書を添付しな ければならない。
(2)再審査をするか否かの決定 査定系と同一である。 (3)その応答
査定系と異なる点は、出願人の応答のたびに、請求人も意見を述べる機会が与え られる。出願人または第三者の一方が提出した書類はすべて他方に送付される。 出願人が応答する毎に、第三者は出願人の応答の送達日から30日以内に、コメ ントを一度だけ提出する機会が与えられる。
(4)拒絶の通知とその応答
審査の手順等は査定系と同一である。
拒絶の通知とその応答についても査定系と同様であるが、第三者は、出願人の応答 のたびにコメントを提出することができる他、追加的な先行技術を提出することが できる。ただし、審査官との面談は、出願人も含め許されてない(規則1.955)。 (5)再審査の終了
査定系と異なり、審査が終了すると、審査官は審査終了通知を発行する。この通 知にはすべての拒絶理由通知が記載される。出願人はこの通知に挙げられている内 容に関して一度だけ見解を述べることができ、補正書も提出できる。それに対し第 三者も見解を提出できる。
査定系再審査と当事者系再審査の比較表
査定系(ex parte reexamination) 当事者系(inter partes reexamination) 概要 出願人(特許権者)請求-審査の
再開
第三者-異議申立(但し、制限有 り)
日本の「無効審判」に近い。
第三者が査定系の手続きをしても第三 者を排除した手続きで行なわれるため、 出願人(特許権者)に有利な形で進めら れることが多かったため、2002年に 査定系の再審査は残したまま、本制度が 追加された。
請 求 人 の 資 格
何人も可。代理人可。 何人も可。実名で請求。利害関係人であ る事。
出願人 自己の特許の有効性確認 - 第三者目的 異議申立
特許の対象クレーム無効
自社の製品が侵害とならない範囲 まで減縮させること
他人の特許が無効であることを確認す る。
第 三 者 の 意 見機会
制限(1回のみ-再審査請求時) 十分に保証されている
審 査 官 と の 面談
出願人は許されている。 第三者も含め、許されていない。
請求の書類 先行技術に基づく、特許性に関す る実質的な問題についての陳述書 再審査を求めるクレームの特定と 先行技術との関連性の説明 先行技術のコピー
特許のコピー
補正書(出願人の場合のみ)
同左
利害関係にある第三者特定のための陳 述書
禁反言が当事者系再審査の請求を妨げ ない旨の証明
考 慮 さ れ る 先行技術
特許・印刷刊行物のみ。
明細書の記載要件、公用の事実、 出願人の行為に関する事実は考慮 されない。
新規性、自明性について審査
同左
必要条件 特許性に関する新しい問題提起要 同左
費用 2520ドル 査定系より高い(8800ドル) 不服申立 出願人は継続出願による審査のや
りなおし不可。審判請求のみ。 第三者は、再審査の決定に対して 審判請求することができる。審判 インターフェアレンス部の決定に 対して審判請求をする事は不可。
審判請求権通知から 1 月以内に審判請 求できる。
3.
調査手法(証拠等の特定と分析)
日本特許庁に審判請求されているもので、調査の対象となり得るか確認する。確 認後は分析に必要な証拠等を収集して分析する。
調査対象の基準は下記の通り。
・欧州特許庁にて第三者により異議申立がなされ、異議決定の後、審判請求が 第三者または出願人により審判請求がなされ、審決が発行されている案件、 または異議決定のみの案件
・米国特許商標庁にて第三者により再審査請求(査定系・当事者系とも)がな され、かつ再審査証が発行されている案件
また、下記案件も場合により対象とする。
・欧州特許庁の場合;審査の段階で拒絶査定がなされ、出願人により審判請求 をして、審決がなされた場合
異議申立で中間的決定がなされた場合
・米国特許商標庁の場合; 出願人(特許権者)による再審査請求(査定系) がなされ、かつ再審査証が発行されている案件
3.1 欧州特許庁・米国特許庁のデータベース利用にあたって
欧州特許庁も米国特許商標庁もインターネットを利用した情報公開がされており、欧
州特許庁のホームページ、米国特許商標庁のホームページより、事前登録なしで包袋も
含め各種情報を入手することができる33。インターネットにより入手できない情報は、
外部の専門業者を経由して入手する。
データベース検索のための検索キー情報34
欧州特許庁のデータベース検索において、日本の審判番号に対応する日本の 公開番号または公表公開番号(公表の場合は国際公開番号)がパテントファミ リを検索するときのキーデータ(日本の公開番号の体系と異なる)である。
33 欧州特許庁においては紙媒体の閲覧は廃止されており、インターネットによる方法でし
か包袋等は閲覧できない。ただし、一部、情報が抜けている場合は、要望を電子メールに て受け付けている(即、反映されるものではない)。米国特許商標庁も2004年の夏から 公開されており、非特許引用ドキュメント(NPL Document)は非公開であるもののインター ネットにて購入可能である。
34 検索以外で審決等の調査に必要な日本の審判番号等の項目は表3-1(抽出のための情
3.2 欧州特許庁(異議決定、審決)
3.2.1 欧州特許庁のホームページの関連機能
下記の4機能が、調査にあたって必要な検索機能である。 1) Number Search(番号検索)
2) Online European Patent Register(EP登録特許検索) 3) Online Public File Inspection(包袋検索)
4) EPO boards of appeal decisions-monthly update(EPO審決月次更 新)
(1) Number Search(番号検索)35
国コード付の出願、登録、公開、優先権番号で特許文献を検索すると、関連特許 情報が得られるデータベースであり、パテントファミリ検索も可能である。 主な内容
書誌事項(Bibliographic Data)、概要(Abstract)、詳細な説明(Description)、請求 項(Claims)、図面(Mosaics)、オリジナルドキュメント(Original document-pdf形式)、 INPADOC legal status、また各国に同時期に公開された特許(Also published as: PDFファイル形式)、場合により引用文献(Cited documents)が電子閲覧可能である。
図面、オリジナルドキュメントについては電子データとして格納されてない場合 もある。
(画面例)
・検索画面(図3-2-01) ・検索結果画面(図3-2-02) ・特許情報画面(図3-2-03)
(2) Online European Patent Register(EP登録特許検索)36
出願番号、登録番号により特許のデータベースを検索できる。
書誌事項の他、関連特許明細書の電子閲覧、審査手続(Examination procedure)、 異議申立手続(Opposition Procedure)、審判請求手続(Appeal procedure)の概要が
35
記載されている。また審決が出されている場合は、審判請求手続きの部分に審決の ドキュメントが参照できるように、リンクが貼られている。
(画面例)
・検索画面(図3-2-04) ・検索結果画面(図3-2-05)
(3) Online Public File Inspection(包袋検索)37
ヨーロッパ特許条約128条に基き、公開後は出願に関連するファイルのコンテン ツ(包袋)を閲覧できる。
異議申立案件の異議決定理由、引用文献等、包袋に含まれている書類は当データ ベースを検索し、包袋のタイトルから内容を参照することができる。
(画面例)
・検索画面(図3-2-06)
・検索結果画面(包袋タイトル)(図3-2-07) ・包袋資料の表示画面(図3-2-08)
(4) EPO boards of appeal decisions(EPO審決月次更新)38
審判廷での決定内容を検索表示できる。審決番号39検索の他、ターム等でワイル
ドカード(*、例えばcomputerでなくcomput*)可能。’(アポストロフィ)なしのワー ドも可能である(例えば、’inventive step`でなくinventive step)。したがって審 決番号が判明していれば、この機能により審決を参照することができる。
(画面例)
・検索画面(図3-2-09)
・審判廷の更新リスト画面(図3-2-10) ・更新リストからのある審決画面(図3-2-11)
(5) その他特記事項
・欧州特許庁のサーバ負荷軽減と第三者がサービスを平等に享受できるように、タイ
37 http://ofi.epoline.org/view/GetDossier(包袋閲覧)
38 http://legal.european-patent-office.org/dg3/search_dg3.htm(審判廷の審決検索)
http://legal.european-patent-office.org/dg3/updates/index.htm(審判廷の更新リスト)
39審決番号説明 (英文字)_nnnn/yy:[英文字 T: 技術(今回の対象),D; 規律,G; 拡大審
ミングによりサービスを受付られない旨のメッセージが出ることもある。
・著作者の許可が得られていない非特許文献は、制限(例えばダウンロード不可。印
刷不可など)されることがある。
・経過記録のタイトルからページ単位、書類単位のダウンロード、表示指定、またチ